
今年度の研究
部長 畑 理恵(世田谷区立芦花小学校)
研究主題「よりよい人間関係や生活をつくり、自己のよさを生かす児童会活動」
1 主題設定の理由
全体研究主題「よりよい人間関係や生活をつくり自己のよさを生かす特別活動」を受け、児童会活動部では「児童会活動における『人間関係形成』『社会参画(自己有用感)』『自己実現』」とは何か」を考えた。そこで、本部会では以下のように定義した。
人間関係形成
よりよい人間関係を築くために、児童会活動では「上級生は下級生に対して思いやりの気持ちをもって接し、下級生は上級生にあこがれの気持ちを抱いて協力できる」ような、異年齢集団活動を通して、他の学年との人間関係を豊かに形成する力を付けることが必要であると考えた。このことは、児童の発意・発想を生かした活動に参画していくことで身に付けていくことができる。
社会参画(自己有用感)
「『自分は必要とされている』『自分は役に立っている』と思える感情」と定義し、それは他者に認められてはじめて得られるものであると考えた。このことは、上述の「人間関係」を豊かにすることと関連が深い。
自己実現
「異年齢交流活動の中で、『自分のなりたい姿』を目指して、全校のみんなのために、その活動の目的や意義を達成していくこと」と捉えた。このことは、上述の「社会参画」していく活動を通して、実現していくものと考えた。
本主題を設定して3年目となる今年度は、令和3年度に振り返った児童会活動における「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」を意識して指導し、目指す児童像の達成を目指す。また、評価規準を見直し、指導の充実や、指導と評価の一体化を図っていく。また、年度当初のオリエンテーション等を通して、以下のことに留意することとした。
〇 「児童の発意・発想を生かした活動」の場を保障する。
〇 「課題の発見」から「振り返り」までの活動を一連の活動 (学習過程 ) としてとらえる。
〇児童会の特質である「異年齢の人間関係」に焦点を当てる。
2 研究の視点
視点1「異年齢の人間関係を高める力を育てる指導の工夫」(人間関係形成)
視点2「学校生活をよりよくしようとする力を育てる指導の工夫」(社会参画)
視点3「異年齢集団活動の目的や意義を達成する力を育てる指導の工夫」(自己実現)
3 研究構想図
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4 3つの視点の有効な手だてとなる資料
今年度の研究紀要をご覧ください。
5 感染症防止対策の工夫
今年度は新型コロナウィルス感染症対策を講じながら、教育活動を行ってきた。特に、全校児童が一堂に会する児童会集会活動は、「密集を避ける」「接触しない」などの対策を取りながら、異年齢の人間関係を大切にして活動を工夫してきた。
ここでは、いくつかの学校で実践した集会活動を紹介する。
1 音声と動画による放送集会活動
6月から児童の登校が始まり、教育活動が再開された。コロナ禍で、校庭や体育館に全校児童が集まって集会活動ができないので、どんな活動ができるかを考え、音声や動画を活用した放送での集会活動を実施した。

2 WEB会議システムを使った集会活動
そもそも集会活動とは、多くの児童が一堂に会し、互いの人間関係を深めていくものである。しかし、放送での集会活動は、リーダー側からの片方向配信になってしまうことが懸念される。そこで「全校児童が集まることができなくなってしまったけれど、はなれていても協力し合いながら、仲を深める集会にしよう」というめあてを立てて、活動を計画した。リーダー側とフロア側の双方向で関わりがもてるように、WEB会議システムを活用して集会を実施した。
「はなれていても協力しようリモート3ヒント集会」「はなれていても協力しようリモートビンゴ集会」「はなれていても協力しようチーム対抗〇〇小 物知り博士集会」などを行った。コロナ禍で集会活動ができないと思われていたが、教室が離れていても同じポーズをして喜び合ったり、画面越しにエアーハイタッチをしたりすることによって、仲を深めることができた。


3 密集を避けるように工夫した屋外での集会活動
全校児童が集まることができない中、密集を避け児童会集会活動をすることができないかと思案し、集団の大きさや活動場所を工夫して集会活動を行った。
「ペアで仲を深めよう〇×ゲーム集会」では、密集を避ける工夫として、クイズの答えが二分化されるような問題を出した。「他学年のことを知ろう!くものす集会」では、これまで校庭全体で全校児童が同時に行っていたゲームを、校庭を四分割し、同じ場所での活動人数を減らす工夫をした。


どちらの集会も、「異学年の児童でペアを作り、自己紹介をしてから始める」「ペアになった人と一緒に行動する」というルールを加え、他の学年の児童と交流することを大切にした。このことにより、「他学年と交流を増やし、仲を深めよう」というめあてを意識しながら活動することができた。
4 児童会の組織を生かした周年行事記念集会
周年行事では、様々な場面で児童会の組織を生かして活動した。代表委員会で話合い、各委員会が、それぞれのよさを生かした役割を下表のように請け負った。
委員会 | 役割 |
---|---|
代表 | はじめ・おわりの言葉、お祝いの劇、児童代表の言葉(感謝と祝意) |
飼育 | カウントダウンカレンダー掲示 |
放送 | 学校の歴史を紹介する番組の放送 |
ビオトープ・健康 | 学校の歴史を感じるコーナーの装飾 |
広報 | これまで発行してきた広報委員会の新聞を掲示、航空写真デザイン募集 |
図書 | 学校の歴史紙芝居の作成とテレビ放送での読み聞かせ |
集会 | 周年行事記念集会での司会、クイズ出題 |
給食 | 全校児童で作った大きなケーキを紹介(周年の数と同数のろうそくを装飾) |
運動 | 周年行事記念集会で使用するくす玉とプラカード作成 |
各委員会がそれぞれの役割を果たし、全校児童が学校の周年をお祝いする気持ちを高めたところで周年行事記念集会が行われた。各児童が学校の一員として周年行事記念集会の計画に参画し、実践することを通して、「仲間から必要とされていること」「自分が役に立っていること」を実感し、自己有用感が高まった。

6 研究を振り返って
今年度は研究主題「よりよい人間関係や生活をつくり、自己のよさを生かす児童会活動」としたが、主題に迫るための検証授業は行えず、昨年度までの研究の軌跡をまとめる活動となった。
今までの研究内容を振り返り整理することで、見えてきたことは以下のとおりである。
○年度当初の委員会活動でオリエンテーションを行うことや、計画から振り返りまでの一連の活動を継続すること、発意・発想を生かした活動の場を保障することで、「全校のみんなのために」という目的や意義を達成する活動につながる。
○視点を明確にしたメッセージボードを活用し、自己実現のベースとなる「あこがれ」と「思いやり」を可視化することを通して、相手意識が育ち、自己有用感の高まりやさらなる活動への意欲につながる。
活動の制限がある中だからこそ、全校児童が関わる児童会活動の果たす役割の大きさを痛感した1 年であった。
来年度に向けて
○あこがれの気持ちや自己有用感をベースとして、次の自分の姿(なりたい姿)に近付こうとしている児童の様相をどのように見取っていくか、また、あこがれや自己有用感以外の自己実現のベースとなる意欲とは何かを探っていく。
○基本的な代表委員会や委員会活動の在り方(「児童の発意・発想を生かした活動」の場を保障すること、「計画」から「振り返り」までの活動を一連の活動としてとらえること)についてさらに見直し、より多くの学校に広めていく。
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