今年度の研究

研究部長 平松 隆行(板橋区立高島第一小学校長)

1 研究主題

自ら未来を切り拓く児童を育成する特別活動

2 主題設定の背景及び理由

 この研究主題で研究を進める2年目である。令和5年度までの研究主題では、特別活動において育成を目指す資質・能力の手掛かりとなる3つの視点「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」に則して、具体的な手だてを研究し、その有効性を示すことができた。

 これらの成果やこれまで積み上げてきた研究成果を土台にして、以下のような教師の願い、社会背景や児童の現況、未来を生きる児童に求められる資質・能力等を鑑み、研究主題を設定した。

① 教師の願い
 現場の教師から「自分たちで何とかしようとする意識を高めたい」「もっとたくましくなってほしい」などの意見が出ている。失敗を恐れずに挑戦したり、失敗から学び、新たな工夫を考えたりする態度の育成が課題として挙がっている。

② 社会背景
 急速な少子高齢化と人口減少、国際化の波、環境問題、AIの飛躍的な発展、終わらない紛争・戦争など、不確実な不安定で社会がすでに現実となっている。まさに、「VUCA時代」を迎えている。そのような中で、価値観の多様化は一層すすみ、様々な障害、性別、年齢、人種、宗教等の人々がともに生きる「共生社会」の実現が求められている。

③ 児童の現況
 不登校児童・生徒数、いじめ認知件数は、急激な増加傾向にあり、大きな問題となっている。これらの諸問題の未然防止に、特別活動を通した「よりよい人間関係づくり」や、「お互いを認め合い、それぞれに居場所のある学級・学校づくり」が有効である。

④ 次期教育振興基本計画
 令和5年6月、政府は「次期教育振興基本計画」を閣議決定した。その中で、これからの教育の指針(コンセプト)が2つ示された。
「持続可能な社会の創り手の育成」
「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」
いずれも「VUCA時代」を生きる子供たちに身に付けさせたい力であることが示されているが、特に、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」においては、特別活動が育む資質・能力と重なるところが多く、特別活動の果たす役割は大きい。

⑤ 東京都教育ビジョン(第5次)
 令和6年3月28日に示された「東京都教育ビション(第5次)」における3つの柱。
・自ら未来を切り拓く力の育成
・誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実
・子供たちの学びを支える教職員・学校の力の強化
「自ら未来を切り拓く力の育成」は、本会の研究主題と同じである。また、「誰一人取り残さないきめ細やかな教育の充実」は、一人ひとりの個性や特性を十分に理解し、思いや願いを十分に聞き取り対応することが基本であることからも、特別活動の理念に通じるものである。

⑥ 中央教育審議会諮問(令和6年12月)
 令和7年1月末より中高教育審議会において、現行の学習指導要領の改訂に向けた議論が始まった。それに先立つ令和6年12月の諮問において、「子供たちを取り巻くこれからの社会の状況」の中で、「多様な他者と、当事者意識を持った対話により問題を発見・解決できる『持続可能な社会の創り手』を育てる必要性」が示された。また、審議事項の一つとして、「多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方」について議論された。「多様性」への対応は、デジタル社会への対応と並び、次期学習指導要領の柱の一つとなることが見えてきた。多様な他者との関わり合いの中で、互いを認め合い、共に課題解決を図る特別活動が育む力が、未来を担う子供たちに必要である。

3 研究主題の捉え方について

「①自ら②未来を③切り拓く児童を育成する特別活動」

①「自ら」

  • 自分や自分たちで課題を見付け、解決しようとする意欲
  • 主体性や協働性を発揮して課題解決に向かう態度

②「未来」

  • 持続可能な未来
  • 多様性が尊重される未来
  • 一人一人のウェルビーイングの向上した未来

③「切り拓く」

  • 前例にとらわれず、主体的に考え、協働して課題解決を図る。
  • 課題解決に向けて、強い意思をもち、諦めずに挑戦を続ける。

4 今年度の研究(昨年度の成果と課題を踏まえて)

  1. これまでの研究で積み重ねた成果を新しい研究主題の捉え方の視点で整理する。
  2. 4つの領域を関連させた指導方法を明らかにする。
  3. 一人一台端末などのICT機器の有効な活用方法の提案を行う。

5 研究構想

特別活動の目標
 集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ、様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して、資質・能力を育成することを目指す。
(1)多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
【知識・技能】①何を理解しているか、何ができるか。
(2)集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。
【思考・判断・表現力等】②理解していること・できることをどう使うか。
(3)自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,自己の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。
【学びに向かう力 人間性等】③どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか。

「よりよい人間関係や生活をつくり、自己のよさを生かす特別活動」の研究成果
特別活動で育成すべき資質・能力の3つの視点 ○人間関係形成 ○社会参画 ○自己実現 を関連させた手だてが有効である。

教師の願い 社会背景(VUCA時代) 社会の要請 児童の実態 特別活動の価値

研究主題

自ら未来を切り拓く児童を育成する特別活動

各部の研究主題

6 研究計画

① 令和6年度…理論構築・研究仮説に基づく授業実践
 ○研究主題の文言の定義について、検討・修正を行い、共通理解を図る。
 ○研究主題に基づき、研究の視点を設定する。
 ○各研究部の目指す児童像とそのための研究仮説・研究の視点を設定する。
 ○研究授業を通して、研究仮説・研究の視点・手だての検証を行う。
② 令和7年度(今年度)…研究仮説・研究の視点・手だての検証・追究のための授業実践
 ○1年目の研究を踏まえて、研究仮説・研究の視点・手だての検証と修正を行う。
 ○修正した研究仮説・研究の視点・手だてに基づいた研究授業を行い、検証を行う。
③ 令和8年度…3年間の研究における成果と課題の集約
 ○手だての汎用性・再現性を追求する。
 ○汎用性・再現性のある手だてを提案する。

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